宮本先生インタビュー③「都市格とは」
2019.10.09
前回住民投票直前にお話をうかがった滋賀大学、大阪市立大学名誉教授の宮本先生インタビューの3回目書き起こしです。この回は「都市格について」です。いつものように、書き起こしテキストを後半に貼り付けます。動画は9分少々です。
なお、書き起こしに際しては括弧や段落は独断で整理させていただきました。ご容赦くださいませ。
「都市格について」
「都市格というのは、人に人格があるように都市にも都市格があるべきだと。
実はこれは大正15年に關(第7代大阪市長)がいい、政策というのは科学の土台がなきゃならないというので東京に対抗して大阪都市協会を作って、そこで「大大阪」という、これも戦前には水準の高い雑誌を出していまして、その「大大阪」の発足の記念の集会がありました。
記念の集会の時に大阪府知事だった中川氏(望)が、「単に経済の街に大阪をしてはならない。やはり文化や、あるいは、みんなが図書館に通って本を見るような、そんな街にしたらどうだ。都市格というのは必要なんじゃないか」といったんですね。
それを受けて毎日新聞の、後に会長になった岡実、關一の親友だったんです。一緒に仕事して、工場法などを作ったりした人なんですが、彼がですね「日本には天子のいるみやこはある。しかし都市はない。しかし大阪は自由な市民の都市にしてほしい。これが都市格だ」といったんですよね。名言でしたね。
つまり権力のみやこじゃない、自由な市民の都市というものを発展させるのが都市政策であり、都市なんだというね。そしてそれが都市格の高い街だということを言ったんですね。私はこれを受けて、大阪は戦後ですねいろいろ言われて、例えば下衆の街になった。昔は大阪よかった。なんでこういう下衆の街みたいになってしまった。もっと文化というものは、大阪が誇っていた文化っていうのを取り戻さなきゃいけないと言ったんですが、まさに大阪がこれから狙うべきは、環境と文化の高い、つまり世界の大都市はみなそれを狙ったわけです。
今更、経済発展ということではないんですね。どこの都市も自分の都市格を誇るというのは、環境と文化にあるわけですね。それを考えて都市格というのを改めて大阪の目標にしてはどうかと提案したんですが、驚いたのは、一番先にそれを受けてくれたのが、大阪商工会議所の会頭になった時、なる前か、大阪ガス社長の大西さん(大西正文氏)が、僕のところへ職員を派遣しまして、「先生、都市格とはどういうことをいって都市格というのか」と来られたので、都市格というのは自由都市でかつ環境と文化の高い、關一がいったように「住み心地の良い都市」を作るのが都市格なんだって言ったら、賛成だということで商工会議所の会頭になったとき、会頭の就任の挨拶の時に、「都市格」を宣言されましたね。
都市格を向上させるということで、「都市格について」という本を出されたんですが、やはり財界人も、本当に大阪を東京とは違う、いわば独自の高い都市格を持つ街にしたいっていうことを願っているんだってわかったんですが、残念なことにその後の商工会議所の会頭や関経連の人たちは、必ずしも大西さんの言った、彼はいくつもの同時に個別の目標を出しているんですが、それを捨ててしまったんですね。
それ以後どんどん東京に本社を移していくんですよね。これは困ったことだと思います。戦前の大阪の財界人というのは、権力あるいは官僚統制に反抗して、大阪という街を支えるって意気を持っていたんですね。
佐高信氏が書いた「電力と国家」の中で、関電の前身であった、宇治電を支えた、一番長く社長した人ですが林安繁さんという方が戦争中に官僚統制に反抗して自由な大阪を主張していたことを紹介していましてね。
やっぱり今回の大阪都構想の中で一番気に食わないのが、権力と恐怖のみやこにしたいんじゃないかと、研究者の言うことをちっとも聞かない、そういう町では都市格というのははなくなってしまうんですね。世界の都市が、今グリーンシティーだとか環境と文化を主張しているときにね。それを大阪の中で最も早く実現するような街にして欲しいと思いますね。」
一気に語ってくださった宮本先生に締めの言葉を頂きました。
「大阪都構想の是非を今回問うているわけじゃないんですね。新聞が非常に間違ってるんです。これは大阪市を廃止して大阪市を五つの区に分割するというだけの話で、大阪市を廃止していいのかどうかということを問い詰められているわけですね。そして先ほどから言いましたようにに歴史的に誇りのある、そして都市政策をリードしてきた大阪市、そしてまた社会的な弱者を、保護しようということで前進してきた大阪市のこの伝統というものを崩さないということが、今度の投票で問われているところですので、是非、大阪市を廃止しないように考えていただきたい。そして投票にいっていただきたいと思います」
以上2015年の5月7日にお聞きしたインタビューを、当時、3回に分けてユーチューブにアップしましたが、2度目の住民投票が確実視され、しかも維新の会の市議、府議会議員の圧倒的な数と、方針を変更した公明党の動きなどから、予想される住民投票は、私たち反対票をという運動をした側からみると、「大阪市が消滅する」という危惧が計り知れないほど大きくなっています。
今、原点にかえって「何故大阪市を潰さねばならないのか」という基本的な疑問と共に、「大阪市」が担ってきた役割や、精神を思い起こし、法定協議会なるもので決められようとしている「特別区案」をも、結局は「大阪市を廃止したい」という人たちの本音をあぶり出していければと思います。