宮本憲一先生へのインタビュー(再掲)

2019.10.07

去る2015年5月7日(住民投票の一週間前)に宮本憲一先生(大阪市立大学名誉教授、滋賀大学名誉教授)へのインタビューをさせて頂き、昔のホームページで公開した動画を再掲すると共に、宮本先生のお話の部分を文字起こししました。

来年の秋にもといわれる二度目の住民投票は、公明党の「賛成」への心変わりや、圧倒的な議員数を誇る維新の勢力により、「大阪市消滅」の危険性は遥かに大きくなっています。あのとき反対票をという運動をした私たちや多くの市民にとって、大阪市をなくすことが、大阪市民にとって本当に良いことなのかどうか。当時の記憶を呼び起こしながら、現在「法定協」で議論されていることの内容などを注視しなければならないと感じています。

この動画は3回に分けてアップしました。
その第1回「大阪市廃止は暴挙である」(8分)のリンクはこちらです。

動画は8分ほどですが、宮本先生のお話の部分のテキストを貼り付けますので、是非お読みくださいませ。

なぜ、大阪市廃止の住民投票は「暴挙」なのか

「大阪市とは歴史的に形成されてきた、日本あるいは世界に誇る大都市なんですね。

そして24のコミュニティを基軸にする区からなっている。そういう伝統を持っている都市なんですけれど十分な議論をしないまま、そして住民が全くその内容を理解しないまま大阪市を廃止するというのは、どう考えても私は暴挙だと思います。

例えばニューヨークや、あるいはミラノ、これを廃止してしまうんだといったら、おそらくニューヨーク市民だけではなくて、アメリカ国民が仰天しますよね。不思議なのはこの大阪都構想が出た時に日本国民全体が仰天しなきゃいけないはずだと思うんですね。

難波宮以来、形成されてきた日本を代表する大都市を、簡単に住民投票で廃止するっていうことしていいのかどうか。例えば京都市に私住んでるんですけど京都市の市民に京都市を廃止するぞというと絶対反対でしょ。近くの堺市でも反対したわけでね。当然自分たちが作ってきた自治体、そして歴史的な伝統があり、それぞれ生活関心や文化が確立している地域をですね勝手にその行政区域を変える、これは日本の悪い所ですよね。明治以来、何かあると市町村合併やるんですが、こんな無茶苦茶な国がないわけでしてですね。

やっぱり歴史的に作られてきた自治体というのは一種の生物みたいなもんですから、その生物の頭と手足を切ってしまって、それで別なものも作るって言えるかどうか。それは歴史の上でありえない世界で初めてくらい大都市をつぶす悪例だと思いますね。」

賛否拮抗と報じられる世論調査をどうみるか。

「確かに戦後の大阪府大阪市、この政治を見ますと、市民をして大阪市批判をする、そういう失敗っていうのがですね確かに繰り返されたこともあると思うんですね。ただ私はまあその戦後の大阪府、市の失敗を見ますとそれは戦前の大阪が思っていた誇りっていうものではなくて、東京の真似をする、東京を追い越したいという、それで作られてきた政策が多く、その失敗のせいだと思いますね。例えば大阪はもともと商都であり、かつ民生的な産業の多い地域で、ある意味では東京とは違い、自由な経済制度を持っていたんですけど、戦争の統制経済からでしょうねぇ。

東京の地位が上がってきて、かつ戦後占領軍の統制があって、そのまま権力の都である東京に経済力が集中していくという形になりましたね。

それで大阪の人たちはその後、東京に追いつけ追い越せという形で、例えば堺泉北重化学工業を誘致したんですね。あれは大失敗で非常に美しい関西随一の海水浴場があったり、住宅地域の美しいところを重化学工業地帯にしてしまって、これは全然地域経済に寄与しなかったんですね。もうすでに新日鉄なんかこれを止めてしまっていますし、それから公害の街としてしまったわけですよね。

その後その東京が筑波学園都市を作るんだというその真似をして阪奈学園都市を作ったんですけど、これは間違いで私はその頃そうじゃないんだと、大阪の一番いいところは集積なんだと。住まい地域にたくさんの産業や知恵を集めている。だからむしろその大阪市内の大学や研究機関を集積させるっていうのがね大阪の生き方なんですね。それを筑波学園都市の真似をしたものですから、あれは完全な失敗で、筑波はうんと国が金を投じましたけれども、大阪の場合には自分でやれという形になったから全然安定しないわけですね。

あるいはオリンピックを東京でやったからそれでオリンピックを誘致する、十分な配慮のないままそういうことを積み重ねてきているわけですね。今度は東京の真似をして東京都導入すれば東京都と同じように発展するって考えてるんですけど、これは完全な間違いで、東京都のように大阪都になったらじゃあ中央の官庁、例えば、経産省が来るかとか、あるいは財務省がくるかというとこんなことありえないです

都になったら国家の財源をくれるかということもありえないわけで、つまりそういうありえないことを、あたかも、都という言葉を使えば東京都と同じように発展する。あるいは東京にいっている本社が帰ってくるって、考えることが十分な分析をした政策論ではない、思いつきに過ぎないっていうと思いますね」

以上書き起こしでした。

最近の記事